「はたらくデザイン」
をめぐる対話
ポスト企業統治をコミュニケーションで越えていく
2018年においかぜ代表の柴田が立ち上げた「はたらくデザイン事業部」。
「はたらくデザイン」とは、働き方をより良くするための仕組みづくりや、新しいチャレンジができる環境づくりを通して、新たな「はたらく」をつくること。この考え方は、おいかぜの理念「だれかのおいかぜになる」とも通じ、全事業部の根底に流れるものでもあります。
本連載は、おいかぜ代表・柴田が、京都に縁のある経営者と「『はたらく』をデザインすること」について語り合う対談コンテンツです。第9回目のお相手は、コミュニティメディア「京都移住計画」の運営を初め、移住促進事業や拠点運営事業などを展開している株式会社ツナグム代表の田村篤史さん。今回は「移住」をテーマに、それぞれの「はたらくデザイン」について語り合いました。
でデザインする。
田村 篤史
株式会社ツナグム代表取締役・聴き手。1984年京都生まれ。3.11を契機に東京から京都へUターン。京都移住計画を立ち上げる。2015年にツナグムを創業。採用支援、企業や大学などの拠点運営、地方への関係人口づくり等を通じて、人の働く・生きる選択肢を広げる。2020年、京都信用金庫の共創空間QUESTIONの運営に参画。新会社Q’sを設立し「京都のまちにもう一つの台所を」をコンセプトにしたコミュニティキッチン事業を開始。
CHAPTER01
「つなぐ」と「生む」の前に「聴く」がある
柴田改めて見ると、田村さんの名刺には「聴き手」と書かれているんですね。
田村そうなんです。一応肩書きとしては「代表取締役」なんですけど、それだけじゃ大事にしていることが伝わらないかなと思って、名刺に加えました。僕は新卒で転職エージェントに入って、キャリアカウンセラーをしていたんですが、今も当時のスタンスを大事にしていて「聴き手」という肩書きを置いています。ツナグムは「繋ぐ」と「生む」の造語なのですが、それらをやる手前の「聴く」という行為を今後も大切にしたいなと。
柴田そうだったんですね。今、ツナグムは何年目でしたっけ?
田村法人化したのが2015年なので、もうすぐ10年ですね。
柴田ツナグムの事業である「京都移住計画」自体は、昨年で10周年でしたよね。
田村そうですね。「京都移住計画」はもともと個人プロジェクトだったんですよ。東京で働いていた僕が、震災を機に「いつか京都に戻りたい」と考え始めたところからスタートして。その後、さまざまな人たちとのつながりを経て法人化しました。
柴田ずいぶん前から「京都移住計画」という言葉は耳にしていたので、その言葉を発明した人はすごいなと思っていました。田村さんと知り合ったのは4,5年前でしたよね。QUESTION1に関わりのある企業として繋がって、そこからお仕事をご一緒したり話す機会が増えて。
田村はい。「京都移住計画」のウェブサイトでも、おいかぜさんの求人記事を出していただきましたね。
柴田僕の田村さんの経営者としての印象は「すべてを受け入れる人」というものです。怒っているところを想像できないくらい常に優しくて、許容力や受容力のある人だなぁと。受け止めすぎて大丈夫か?と心配になることもありますが(笑)。
田村大丈夫じゃないんですが、まあその話はおいおいするとして……(笑)。僕から見た柴田さんは「近所のお兄ちゃん」って感じですね。僕よりも10個くらい年上の、京都の経営者の先輩。その中でも特に話しやすい方だなと思っています。
柴田ありがとうございます。今日は田村さんと「移住」というテーマから「はたらくデザイン」について話をしていきたいなと思っていますのでよろしくお願いします。
1 京都信用金庫が運営する、コワーキングスペース・レンタルスペース・コミュニティキッチンが利用可能な共創施設。ツナグムはコアパートナーとして運営に参画し、おいかぜはウェブサイト制作を担当している。田村さんは8階にあるコミュニティキッチン「DAIDOKORO」を運営する株式会社Q’sの代表でもある。
CHAPTER02
会社のエネルギーは「求心力」と「遠心力」
柴田まずは、僕が考える「はたらくデザイン」についてお話させてください。
会社って、基本的には既存事業と新規事業で売り上げを作っていますよね。特に経営者は新しい事業を生み出すために、既存事業の枠を越えようとします。でもそれって社員から見ると、「既存事業を放ったらかしにして別のことをしている」ように見えてしまいがちだなと感じていたんです。
既存事業に取り組んでいる社員たちにとっての良い会社作りができていないと、「新規事業は誰がやるの?」とか「既存事業は大事じゃないの?」などいろんな反発や軋轢が生まれてしまう。逆に言えば、良い会社作りをすれば新しいことへチャレンジできるようになるのではないかと考えました。そんな仕組みや環境を作ろうというのが「はたらくデザイン」なんです。
田村ああ……その話、心に染み渡りますね(笑)。まさにそれが大変で。
柴田そうですよね。ツナグムさんも「京都移住計画」という既存事業をされつつ、新しいことへもチャレンジされているところだと思うのですが、その辺りどうされているのかなと。
田村もともとツナグムを作った時は「フリーランスの集合体みたいな組織」だと表現していたんです。というのも僕自身、会社員時代ずっと「個人が会社に合わせる」という働き方が居心地が悪かったんですね。そうじゃない形にするために「個人と会社が交渉できるような関係性にできたらいいな」と考えました。
例えば、会社としては売り上げを昨年より伸ばしたい。でも個人からしたら「売り上げも給与も70%にする方が余裕を持って暮らせるからいい」という場合もあると思うんです。
僕自身、最初の会社に週5フルタイムの正社員で入ったんですが、2年目が終わるタイミングで上司に「契約社員に切り替えてほしい」と話したんですね。「給与も新卒の基準まで下げていいし、ボーナスもいらない。売り上げ目標もそのままでいい。その代わり週3勤務に切り替えて、リーダー業務と定例会議から外してくれ」と。その空いた時間を、新しくやりたい仕事に充てようと考えていました。
柴田すごい、めちゃくちゃ「はたらく」をデザインしていますね。
田村それが個人と組織がフェアに交渉するってことだと思っていたんです。どのくらいのペースで働いて、どれくらいの報酬をもらいたいか。どれくらい会社で働いて、どれくらい別の場所で働きたいか。フリーランスが自由に働き方を選べるように、ツナグムも自由に働ける会社であれたらいいなと思ったのがスタートでした。
ただやっぱり、今はその難しさを感じています。それはそれでいいんだけど、全部がいいなんてことはなくて……。
柴田すべての面でいいものなんて、この世にはないですもんね。
田村抽象的な話になりますけど、「会社」のエネルギーって、真ん中に向かう求心力と、外側に向かう遠心力に分かれると思うんです。ツナグムの場合、明らかに遠心力が強い。「みんなのびのび自分の好きなことをやっているね」と良く見られることもあると思うんですが、その力って既存事業を育てる方へは向かいにくいんですよね。
柴田求心力は強くなるたび上に上がるけれど、遠心力だと遠くへ飛ばされていきますからね。つまり、まとまらないという……。
田村そうなんですよ。最初は個人の働きやすさだけを考えてスタートしていたから、組織としてまとまろうとすらしていなかった。それが今既存事業が大きくなってきているので「はて、どうしたものか」と思っている次第なんです。
CHAPTER03
今のツナグムは「さなぎ」の状態
田村ツナグムは最初「人と人、人と場のつながりを紡ぐ」というミッションだけを置いていて、それが体現できていたら何をしてもいいと考えていました。その解釈や具体化については一人ひとりに委ねていたんです。でもそれだとバラけてしまうので、ビジョンに「生き方・働き方の選択肢を拡げ、共に生きやすい社会を実現していく」という言葉を置いた。その一つの手段が「移住」であると明示したんですね。
だけど、ここに置いた言葉と事業がうまく繋がっているのかというと、正直できていない。ミッションとビジョンに掲げた言葉は本気なんだけど、それをわかりやすく事業の中で設計できているのかというと、そうでもないな、と……。
柴田はい、はい。
田村僕らの既存事業である「京都移住計画」を、もっと自分ごととしてやりたいと思っているけれど、遠心力だとそうなりにくいのが課題ですね。どうしても自分の事業よりも、「今、目の前のお客さんと何をするか」に引っ張られがちなんです。これはクライアントワークあるあるですが。
柴田なるほど。でもなんとなくですけど、田村さんは心のどこかで「まとまらなくていい」って思ってるんじゃないですか?
田村うん、半分思ってます。
柴田ですよね。この対談連載でいろんな経営者の方と話していて思うんですが、みなさん、ある仮説を立てて会社という実験をしているように感じるんですね。田村さんの実験はまさに「遠心力で会社を持続させる」ことなんじゃないかな。悩んでいるようで、実は悩んでいないのでは……。
田村いや、悩んでます(笑)。
柴田悩んでるんや(笑)。
田村悩んでるというか、うーん……遠心力だけではあかんなと思っているのは確かだから、求心力にもエネルギーを持っていかなくちゃいけないなとここ2年ほど思っていて。でもそこに僕の「得意」がなくて、うまくしきれていない。僕自身モヤモヤしているし、多分周りの人の目にも中途半端に映っていると思う。そもそもそれをほんまにやりたいのかなって……あの、こんな悩みごとが記事になっても大丈夫ですかね?(笑)
柴田大丈夫だと思います(笑)。
田村柴田さんには以前「『京都移住計画』にはもっとやれることあるよ」と言われましたよね。
柴田うん、もっと伸びしろがあると思います。まず名称がわかりやすいし、「京都移住計画」のメディアに載る情報にはちゃんと物語性があるから、採用で困っている企業さんにはいつもおすすめしているんですよ。求心力をもってこの幹をより強く育てていけば、周辺の仕事もいっぱい取れるだろうし、ビジネスとして楽になるんじゃないかな、と。まあ、こんなありていなロジックは田村さんには響かないかもしれないですが(笑)。
田村いや、響いてますよ!(笑)でも僕の得意がそこにないんです。僕は「0→1」、もっと言うと「0→0.1」らへんのところが好きで、多分得意なんですよ。ただそれがある程度形になってくると、定型化されて繰り返しや改善業務が出てくるじゃないですか。それが僕にはあんまりおもしろくなくて……。特に「京都移住計画」は、活動を始めてから12年経っているんですよね。だからもう、新鮮さのないものに見えてしまっているのかもしれない。
柴田へえー。
田村あと自分が亀岡市に移住したっていうのもあります。もちろん「京都移住計画」は「京都府」と捉えて事業をやっているんですが、コンテンツの大半は京都市のことなので、なんか自分ごと感が薄れていっているなと思いますね。構いきれていないなと。
だからこそ自分ごと感のあるメンバーに動いてもらっているんだけど、じゃあ僕はどこで何をするべきなんだろうかと、ふわふわしています。
柴田もしかしたら田村さんは今、遠心力と求心力、同時に発生させようとしているんじゃないですかね? 遠心力については放っておいても作れる組織だし、それを削ぐとツナグムの個性がなくなると本能的に感じている。だからそれは止めないで、かつ既存事業へ向かう求心力も起こそうっていう。だから余計、難しいことになっているんだと思うんです。それだと体が分裂しちゃいそうだけど。
田村ああ、そうかもしれません。実はこの2年「悩む期間にしよう」って決めていたんですよ。採用説明会でも「今うちはさなぎみたいな状態です」って話してて。さなぎの中って、細胞が未分化でどろどろの状態じゃないですか。だから今ツナグムで働く人は、自分が何をどう担うかよくわからなくなることもあるかもなと思って、先に言っておこうと思ったんです。
今のままではいられないことはわかるけど、じゃあさなぎの後に何になるのかはわからない。蝶になるのか、カブトムシになるのか……だから分裂しがちだし、周りの人、特に一緒に会社をつくったタナカユウヤに対しては、ほんと「ごめんなさい」って感じですね。
CHAPTER04
これから必要とされるのは「はたらくリテラシー」
柴田今、ツナグムさんは何名くらいなんですか?
田村実はこれも難しくて……まさに今「社員とは?」という状態なんですよ。一応「社保に入っている」を定義とすると7名。加えて、業務委託のメンバーもいます。
うちではよく、「ツナグムで働く人」と「ツナグムと働く人」に分けて考えるんですけど、この中にもさらにレイヤーがあって。年間通じて動く人もいれば、ショットで働く人もいる。「で」と「と」の間が曖昧だったりもするんですよね。
柴田確かにそこはわかりにくいかも。外からは同じっぽく見えますよね。
田村このふわふわした状態はあんまりよくないと思っていて、もうちょっと「ツナグムにおける『社員』とは?」を明確にしたいんですけど……。ぬえの松倉さんの記事を読んでいると、働き方を形にするの上手やなぁと感心しました。僕はあの感覚だけはあるんだけど、形にできていないので。これも、求心力について考え始めてから悩んでいることですね。
柴田これからも人を雇っていくとなると、どこかのタイミングでツナグムでの「はたらく」を整理しなくちゃいけないですよね。でも「整理せずに進む」っていう選択肢もあるんじゃないかと思ってて……。
田村おお。
柴田というのも、僕は割と組織をカチッと作るタイプなんですけど、それが正解だとも思っていないんですよ。松倉くんなんか、まさにフリーランスの集合体で生きていけるような人なのに、あえて組織を作って境界を曖昧にしている。今の田村さんの状態を、意図してやってる感じがあるんですよね。
田村はい、はい。
柴田カチッとした組織作りと、曖昧な組織作り。僕自身、この対談を繰り返しながら、どっちが今の時代に最適なのかよくわからなくなっているんです。経営者からすると、定義を明確にして雇用契約を結んだ方が人件費が見えやすいけど、「はたらく」という視点から見ると「結局どれでもいいんじゃない?」ていう気もしていて。
柴田今「資本主義は限界に来ている」と言われていますけど、既存の企業統治のやり方も限界が来ているように思います。働き方改革で「残業はしちゃだめ、もっと働き方を自由に、でも給与は上げて」と言われてきたけれど、既存の統治の仕方ではこれ以上まとめることができない。どうすればいいのか、みんなわかっていないんですよね。
じゃあ次に何があるのかと言うと、僕は「自立した個が集まって仕事をする」みたいな形なのかなと思います。もしそこに向かっているのなら、かっちりした組織づくりは違うのかもしれない。田村さんの今の状態の中にこそ、最適解があるのかも。だからなんていうか……「ツナグム頑張れ!」って思ってます(笑)。
田村急に根性論(笑)。でも確かにそうかもしれないですね。
柴田今まで企業統治をしなくちゃいけなかったのは、価値を測る手段がお金しかなかったからです。ポスト資本主義・企業統治があるとしたら、お金以外の価値の可視化が必須な気がします。つまり「働き方を自由に選べる」ということ自体が、お金と同じように価値として定量化されないといけない。新しい「はたらくリテラシー」が求められているな、と。
田村なるほど。「はたらくリテラシー」かぁ。だいぶ整理されてきました。この対談の音源、後で欲しいです(笑)。
CHAPTER05
「どう働きたいの?」と聞き続ける
柴田田村さんは今、どんなふうにメンバーの「はたらく」をデザインしたいと考えていらっしゃるんですか?
田村やっぱり、その人が一番イキイキした状態で働けるようにしたいですね。めっちゃ稼ぎたいなら稼げるようにしたいし、時間にゆとりを持ちたいならそうできるようにしたい。
柴田田村さん自身、自分で選択することを大事にされていらっしゃいますもんね。そもそも「移住」という言葉には、「引っ越し」や「転勤」よりも自分の意志や自主性が存在している気がします。
田村ああ、確かに。
柴田田村さんの場合、その「自主性」が「はたらくデザイン」に強く結びついているんじゃないでしょうか。移住者にもツナグムのメンバーにも、「自分はどう生きていきたいのか」「どう働いていきたいのか」を常に問うている。 ファーストキャリアがキャリアコンサルタントであったこと、肩書きが「聴き手」であることも、それと繋がっているのかもしれないですね。
田村なるほど……。
柴田だから今まで散々「会社ってどうあるべきか」「社員ってなんだろう」と話しましたけど、もしかしたらそれは田村さんが決めなくても、みんなに聞いてみたらいいのかもしれない。「『ツナグムと働く』と『ツナグムで働く』、どう違うんですか?」って聞かれたら、「君はどう思う?」って聞き返すとか(笑)。
田村あはは、逆に聞いちゃうのか。でも確かにそうかもしれません。以前「京都移住計画」のことを知ってくださった方が「自分で住む場所を決めていいんだと気づいた」というご感想をくれたことがあったんです。その時に僕は「そう思っていない人もいるんだ!」って衝撃を受けたんですよね。働くことに対しても、自分で決めていいと思っている。「どうしていきたい?」と聞き続けるのは、一貫して僕らしいやり方かもしれません。
柴田住む場所も働き方も自分で決めていいんだよっていうね。僕、田村さんのエピソードで好きなのが、高校生の時に自分で勝手に有休をとっていたっていう話なんですよ。
田村ああ、そんな話しましたね(笑)。社会人には有休制度があるらしいと知って、「なんでそれ学校にはないんやろ」と思って、自分の中で勝手に有休を作ったって話。学校にいる時間って外部から遮断されているから、外を見に行くのも勉強だよなと理由をつけて。
柴田そこにもやっぱり「自分はこうしたい」という意志がありますね。
田村そうか、有休の話は移住やツナグムに繋がるのか(笑)。だけど確かに、見たい世界も同じかもしれません。有休とると、普段見られない世界を見られるじゃないですか。平日の昼間ってこんな感じなのか、とかね。みんなと同じところにいなくてもいい、好きな場所に行っていいっていうことが、僕には豊かに感じられるんですよね。自主性が高いというよりは、自由でいたいんだと思います。
メンバーにもそうあってほしいと思っているのに、この2年間は逆に、ツナグムでの働き方を僕自身が決めようとしつつあった。その方が求心力が生まれるのではと思ったからなんですけど、どうやら僕と相性が合わないみたいだし、やっぱり違うのかもなぁ。
CHAPTER06
他人の人生ではなく、自分の人生を生きる
柴田田村さんのように、「住む」も「はたらく」も自分でデザインできるんだと思っている人って、実はそんなに多くないような気がします。
田村僕の中では、「他人の人生ではなく、自分の人生を生きる」っていうことなんですけどね。その考え方って誰も教えてくれないし、そもそもどこで育まれていくものなんやろう……。
柴田でもその考え方を「京都移住計画」が体現して見せてくれていると思いますよ。それはすごく大きな価値だし、さっき言った「はたらくリテラシー」を上げることにもつながっているんじゃないかな。
次はその価値を定量化するのが、ツナグムのミッションなんじゃないですか?難しいけれど、それができるようになったら世の中や会社がより良くなる気がします。
田村なるほど。いやぁ、考えがすごく整理されました。すみません、悩み相談みたいになってしまって。
柴田いえいえ。とてもおもしろかったです。特に有休と移住が繋がったのが(笑)。
田村それは僕自身も発見でした。あと「『はたらくリテラシー』をどうしたら上げられるのか」は、より深めたいと思いましたね。組織と個人の両方がそれを持っていれば、きっと理解し合えるはずだから。僕のやるべきなのは、ルールで縛るのではなく、コミュニケーションで超えていくことなのかもなと、改めて思いました。
柴田コミュニケーションで超える、か。田村さんはやっぱり一貫されていますね。キャリアカウンセラーとして「聴き手」として、その人の自主性を掘り下げる人なんだと思います。移住者にも、社員にも、きっとご自身にも、「どうやって生きていきたいの?」と一貫して問い続けている。そういう人が組織を作るとどうなるのか、とても楽しみにしてます。
田村めちゃくちゃありがたいフィードバックです。ちょっと自信出ました(笑)。
柴田よかった!いい時間でしたね。ありがとうございました。
MEMO
取材場所となったのは、QUESTION8階にあるコミュニティキッチン「DAIDOKORO」。田村さんはこちらの場所を運営する株式会社Q’sの代表でもあります。今「食」に対する興味が強まっているという田村さんが、対談後にフランス料理人の神様と呼ばれるフェルナン・ポワンの言葉を教えてくださいました。「『若者よ故郷に帰れ。そしてその町の市場に行き、その町の人のために料理を作れ』……あらゆる仕事の人に通ずることですよね」。今回、ご自身の思考の渦中を話してくださった田村さん。これからのツナグムの動きがますます楽しみです。
- 取材・文
- 土門蘭